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2025/12/06

【病気解説】⑬ 乳腺腫瘍(にゃんこ編)

猫の乳腺腫瘍とは

猫の乳腺腫瘍とは、左右に4対(合計8つ)ある乳腺にできる腫瘍のことです。

乳腺腫瘍は猫の悪性腫瘍のなかではもっとも多く、腎臓病、心筋症に次いでかかりやすい病気です。乳腺腫瘍はほとんどがメスですが、少ないながらオスにも発生することがあります。

猫の場合、乳腺腫瘍の85〜95%が悪性(乳がん)だと言われています。
しかも、転移率は50〜90%と非常に高く、初期でもリンパ節への転移率は20~42%となっています。
そのため、発見されたときにはすでに肺やリンパ節に転移していることも少なくありません。

また、良性腫瘍と診断されても油断は禁物。経過とともに悪性に転化することがあるため注意が必要です。

猫の乳腺腫瘍の原因

猫の乳腺腫瘍がなぜおこるのか、明確な原因はわかっていません。

一方で、避妊手術をおこなっていない猫は、避妊手術をおこなった猫よりも発生率が7倍も高いことがわかっています。
そのため、ホルモンバランスと密接な関係があると考えられており、とくに卵巣から分泌されるエストロゲンが大きく関わっているとされています。

また、ホルモン製剤の「プロゲスチン」の投与歴や遺伝も原因になりうると言われています。

猫の乳腺腫瘍のステージと余命

猫の乳腺腫瘍は、腫瘍の大きさ、リンパ節への転移の有無、遠隔転移(ほかの臓器への転移)の有無によって4つのステージに分類されています。

ステージ腫瘍の大きさリンパ節転移遠隔転移余命
I2cm未満なしなし29ヶ月
II2〜3cm程度なしなし12.5ヶ月
III3cm未満3cm以上ありなしなしなし9ヶ月
IV大きさ問わずありあり1ヶ月

ステージIIIは、遠隔転移がなくとも以下の2つの基準のどちらかに当てはまる場合に診断されます。

  • 乳腺腫瘍の大きさが3cm未満でリンパ節への転移が認められる
  • いずれの転移も認められない場合でも、乳腺腫瘍の大きさが3cm以上ある

猫の乳腺腫瘍は、一般的に2cm以上になるとほかの臓器への転移率が高くなり、余命も短くなる傾向です。
一方、2cm未満で初期転移もなく、適切な治療がおこなわれた場合は長生きできる可能性が高くなります。

乳腺腫瘍になりやすい猫の特徴と好発年齢

乳腺腫瘍になりやすい猫にはどのような特徴があるのでしょうか。
また、リスクが高くなる年齢はあるのでしょうか。

乳腺腫瘍のリスクが高い猫

乳腺腫瘍になりやすい猫の特徴として以下の3つがあげられています。

  • 避妊手術をしていない中〜高齢のメス猫
  • ホルモン製剤の「プロゲスチン」の投与歴がある猫
  • 遺伝的要因

また、乳腺腫瘍になりやすい猫種は、シャム猫、ペルシャ猫、アビシニアン、日本猫(雑種)などです。
とくにシャム猫の乳腺腫瘍の発症リスクは、ほかの猫の2倍にもなります。
診断される年齢も若い傾向にあり、遺伝的要因が原因と考えられています。

性別では圧倒的にメス猫が多く、乳腺腫瘍の99%とも言われています
一方のオス猫も、リスクとしては低いものの注意はしておくべきでしょう。

乳腺腫瘍の好発年齢

猫の乳腺腫瘍は中〜高齢での発症が多く、発症年齢は平均で10〜12歳。
日本ではもっとも多い発症年齢が12歳との報告があるようです。

ただし、2歳の猫での発症例もあるため、若いから乳腺腫瘍にならないとも言い切れません。

猫の乳腺腫瘍の検査と診断方法

猫の乳腺腫瘍の診断では、触診でしこりが認められたら、腫瘍が良性か悪性かを確認するために細胞診検査がおこなわれます。

細胞診検査の結果、悪性(乳がん)だった場合は、全身への転移の有無や腫瘍の広がりを調べるために、エックス線検査、超音波検査、リンパ節の針生検などがおこなわれます。

これらの検査結果に基づいて、今後の治療方針が決められます。

猫の乳腺腫瘍の治療法

猫の乳腺腫瘍の一般的な治療は外科手術です。
さらに必要に応じて、化学療法をおこなう場合もあります。
それぞれの治療について、もう少し詳しく見ていきましょう。

乳腺を切り取る外科手術が基本

猫の乳腺腫瘍の治療では、片側または両側の乳腺とリンパ節をすべて切除する外科手術をおこないます。
ごく初期で転移していなければ、手術のみで完治し長生きすることも可能です。

悪性腫瘍の場合は、腫瘍部分のみを切除すると再発や転移のリスクがあるため、正常な範囲も含めて広く切り取るのが一般的です。
また、最近では片側切除よりも両側の乳腺を切除したほうが長く生きられる可能性があるとの考えもあります。
両側を切除する場合は、2回にわけて手術をおこないます。

広範囲の切除は負担も大きくなりますが、愛猫の命を守るためにも必要な手術です。
獣医師としっかり話し合い納得のいく治療を受けるようにしましょう。

手術後に化学療法をおこなう場合も

乳腺腫瘍では、がん細胞がリンパ管に入り込んだり(リンパ管内浸潤)、リンパ節転移が認められたりした場合や、手術がおこなえない場合は化学療法が推奨されます。

化学療法とは、抗がん剤を投与して、腫瘍の増殖を抑制する治療です

乳腺腫瘍の外科手術のあとに化学療法をおこなうと、手術のみの猫よりも平均余命が延びたという報告もあります。

サプリメントを与える

外科、化学療法のほか、がん細胞の増殖を抑制する効果が期待できる「タヒボエキス」が配合されたサプリメントを利用する方法も選択肢のひとつです。

自壊した乳腺腫瘍の応急処置

猫の乳腺腫瘍は、大きくなると悪性・良性問わず自壊の可能性があります。
自壊してしまった場合は、応急処置のうえ、早急に動物病院を受診しましょう。
具体的な方法を紹介します。

乳腺腫瘍の自壊とは

手術ができない状態で症状が進行すると、大きくなった乳腺腫瘍が自然に破れて表面がジュクジュクして出血します。
このような状態を「自壊」と言います。

猫の乳腺腫瘍が自壊した際の症状は以下のとおりです。

  • 痛みによる食欲不振・栄養失調・元気の消失
  • 腫瘍の表面がジュクジュクして出血する
  • 腫瘍からの出血で貧血になる
  • 腫瘍から腐敗臭がして虫がわく

自壊すると、腫瘍の傷の状態が悪化するだけでなく、猫は強い痛みを感じるようになり、食欲不振や栄養不足におちいる場合があります。健康状態にも注意して見守る必要があります。

自壊した乳腺腫瘍の応急処置

乳腺腫瘍が自壊した場合は、感染を起こさないように傷口を清潔に保ちましょう。

  1. 流水で傷口を洗い流す
  2. 細かい穴を開けたラップを巻く
  3. ラップの上からガーゼなどを当てる

人間用の消毒液は、逆効果になってしまうこともあるため使用しないようにしてください。

また、ガーゼを直接傷口に当てるとくっついてしまう可能性があるため、細かい穴を開けたラップを巻いて、その上から清潔なガーゼなどを当てて傷を保護します。

この方法は、あくまでも応急処置です。早めに動物病院を受診し、処置してもらいましょう。

猫の乳腺腫瘍の予防法と早期発見のためにできること

猫の乳腺腫瘍は、腫瘍のサイズが大きくなればなるほど予後が悪いとされています。
予防と早期発見に努めるようにしましょう。

12ヶ月までに不妊手術をおこなう

猫の乳腺腫瘍の原因には、卵巣から分泌されるホルモンの影響があげられています。
上にも書きましたが避妊していない猫は、避妊している猫の7倍ものリスクがあると言われています。
そのため、避妊手術には高い予防効果が望めるのです

ただし、避妊手術をおこなう時期によって、乳腺腫瘍の発生率には大きな差があります。

避妊手術をした月齢発生低下率
6ヶ月未満91%
7〜12ヶ月86%
13〜24ヶ月11%
24ヶ月以降予防効果なし

24ヶ月以降に避妊手術をおこなっても、予防効果はありません(※諸説あります)。
乳腺腫瘍のリスクを減らすためには、遅くとも12ヶ月以内に避妊手術を受けることが推奨されています。
妊娠を望まないのであれば早めの手術を検討しましょう。

スキンシップで乳腺腫瘍のチェック

猫の乳腺腫瘍は早期の避妊手術で、予防効果が期待できますが、100%予防できるわけではありません。
愛猫を守るためにも定期的なチェックを習慣にしましょう。

乳腺腫瘍は腫瘍の直径が2cm以下で発見できるかどうかが、その後の余命に大きく影響します。
リンパ節への転移がなくても腫瘍の直径が2cm以上になると、余命が短くなると言われています。

日頃からスキンシップをかねてチェックし、早期発見に努めましょう。

乳腺腫瘍のチェック方法

早期発見のためには、おっぱいの付近にしこりがないか定期的にチェックしてください。

チェック法の手順は以下となります。

  1. 膝の上に仰向けに寝かせる
  2. わきの下から後ろ足の付け根にかけてマッサージ
  3. おっぱいの付近をかるくつまむようにして広範囲をチェック

仰向けを嫌がる場合も、お腹に触れることができればチェックは可能です。
ただし、無理強いは禁物です。
ストレスになりますので、嫌がったら中断し、時間を置いて再チャレンジしましょう。

もし、数ミリ程度の小さなものでもしこりを発見したら、念のため動物病院で検査を受けるようにしてください。

定期的に健康診断を受ける

健康診断の際に乳腺腫瘍のチェックをおこなうことで、早期発見・早期治療につながります。
7歳までは年1回、7歳以降は年2回の健康診断が推奨されています。

健康診断をおこなうことで、乳腺腫瘍以外の病気の早期発見にもつながります。
愛猫の健康を守るためにも定期的に健康診断を受けるようにしましょう。