【病気解説】⑥ 尿道閉塞症
猫の尿が出ない時は要注意|命に関わる尿道閉塞とその治療・予防法
最近、「猫のトイレの様子がおかしい」「踏ん張っているのに尿が出ていない気がする」そんなふうに感じたことはありませんか?
猫が急に排尿できなくなる症状として、「尿道閉塞」と呼ばれる病気が考えられます。尿が出ない状態が続くと、体の中に毒素が溜まり、急性腎不全を引き起こしてしまいます。その結果、数日以内に命を落としてしまうこともあるため、早期発見と迅速な対応が何よりも大切です。
今回は猫の尿道閉塞について、その原因や症状、治療方法、自宅でできる予防策などを詳しく解説します。

緊急性の高い症状
尿道閉塞は、初期の段階では見逃されやすいものの、進行すると急激に悪化することがあるため注意が必要です。以下のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
・トイレで何度も踏ん張るのに尿が出ない
・排尿時に痛がって鳴く
・元気や食欲の低下
・下腹部を触ると嫌がる、痛がる
特に、24時間以上まったく尿が出ていない場合は、非常に危険な状態です。そのため、迷わず、すぐに病院に連絡してください。

原因
猫が尿道閉塞を引き起こす原因は、以下が挙げられます。
・尿路結石(尿に含まれるミネラル分が固まってできる石)
・膀胱炎による炎症物質の蓄積
・尿砂(細かい結晶状の物質) など
これらが尿道内で詰まってしまうことで、尿が出なくなってしまいます。

さらに、まれに腫瘍が尿道を圧迫しているケースもあります。また、猫の尿道の構造上、特にオス猫では尿道が細く、S字状に曲がっているため、詰まりやすくなっています。そのため、オス猫にとって尿道閉塞は非常に起こりやすい病気だといえます。

診断方法
診断には、まず身体検査で膀胱の状態や痛みの有無を確認したうえで、尿検査や血液検査を行います。

さらに、レントゲン検査や超音波検査によって、尿道や膀胱の中に結石や異物がないかを詳しく調べます。
これらの検査によって、症状の原因と重症度を正確に把握し、最適な治療方針を決定します。

治療方法と緊急時の対応フロー
尿道閉塞が確認された場合、まずはカテーテル(細い管)を尿道に挿入し、詰まりを取り除いてから膀胱にたまっている尿を排出します。この処置で膀胱内の圧力を下げ、腎臓への負担を減らします。

その後、猫の状態に応じて入院をして治療を行い、点滴による体内の水分や電解質バランスの回復、膀胱の洗浄、炎症を抑えるための薬の投与などを行います。
もしカテーテル処置で改善しなかったり、何度も再発を繰り返したりする場合には、「会陰尿道瘻設置術」という手術で、尿道の新しい出口を作る治療法を選択することもあります。

自宅でのケアと再発予防
尿道閉塞は再発しやすい病気です。しかし、以下のような飼い主様のちょっとした工夫で再発リスクを減らすことができます。
<水分摂取量増加の工夫>
猫はもともとあまり水を飲まない動物ですが、尿が濃くなると結石や尿砂ができやすくなります。そのため、水分をたくさん摂取することで尿を薄くし、排尿の回数を増やすことが再発予防に欠かせません。
また、猫によっては水の温度や器の素材、流れている水が好きな子もいれば、静かな場所に置いた水を好む子もいます。そのため、愛猫の好みに合わせて、さまざまな方法を試してみてください。また、水は1日数回入れ替えて、新鮮な状態を保つようにしましょう。

<食事管理>
栄養バランスのとれた総合栄養食のみを与えるようにしましょう。また、リンやマグネシウム、カルシウムなどのミネラル量を調整して、結石ができにくくなるよう配慮した療法食を取り入れる選択肢もあります。

ただし、療法食はすべてのケースに有効とは限らないため、必ず獣医師の指導のもとで取り入れるようにしてください。
<適正な体重の維持>
肥満は尿道閉塞のリスクを高めるため、適度な運動と食事量の管理が必要です。特に去勢手術や避妊手術後はホルモンのバランスが変化し、必要なカロリーは減るのにもかかわらず食欲が増えることから、太りやすくなります。そのため、適度な運動と食事管理を心がけましょう。室内飼育の場合はキャットタワーやおもちゃを活用し、上下運動や遊びの時間を設けてあげてください。

<ストレスの軽減>
環境の変化やトイレの汚れは、猫にとって大きなストレスになります。静かで落ち着ける空間を用意し、トイレは常に清潔を保ちましょう。また、排泄を我慢してしまうことが、尿道閉塞の引き金になることもあるため、トイレ環境は特に気をつけてあげてください。

まとめ
尿道閉塞は、命に関わる危険な病気です。特にオス猫では非常に起こりやすく、放置すれば急性腎不全や膀胱破裂など、取り返しのつかない状態になることもあります。
そのため、飼い主様が日々の排尿状態をよく観察し、少しの変化にもすぐに気づいてあげることが何よりも大切です。もし、いつもと違う様子が見られたら、「大丈夫かな?」と様子を見るのではなく、すぐに動物病院に相談しましょう。
また、再発予防のためにも、水分摂取の工夫や食事、体重、ストレス管理を意識しながら、定期的な健康診断を受けることをおすすめします。